カズ 100ゴールに思う


1984年のサッカー、メキシコワールドカップは、最もエキサイティングだった。

予選でも日本代表はあと一歩というところまでいった。いまや伝説と化している韓国戦で木村和司直接フリーキックを決め、魔術師と言われたのもこのころだ。他にも柱谷幸一水沼貴史原博実加藤久らが中心だった。監督は森孝慈だ。そして最も憎んだのは、先のフランスワールドカップで韓国代表を率いた車範根である。


そんなわけでカズこと三浦知良は、私にとっては遅れてきたヒーローであった。しかし世の流れには見事に合致したようで、彼がいなければJリーグは誕生しなかったかもしれない。
そのカズが先日100ゴールの記録を達成した。スタートは最強を誇っていたころのヴェルディであったが、途中でブラジルへ行き、クロアチアへ行き、そして現在はJ1でも下位での低迷が続く京都パープルサンガでの記録達成である。これはたいへん評価すべきであり、評価してもしすぎるということはないだろう。心から拍手を贈りたい。


しかしこれだけ中抜けしたりしていながら、カズを追いこす選手が出てこないのがとても不思議であり、今後を考えるととても不安に思う。
果たしてカズは日本のサッカー選手の中で、ズバ抜けた才能を持つストライカーであろうか。もちろん彼の身体能力、センス等は日本人の中では超一流の部類に入るかもしれない。さらに特筆すべきなのは、飽くなき向上心、貪欲さである。あらゆるプレーにおけるなりふりかまわぬ必死さは、見る者の嘲笑を声援に変えるほどひしひしと伝わってくる。もうあとがないという年齢的なものもあるかもしれない。一般のファンはカズのことを「終わった」と思っているのではないだろうか。城や中田、名波、そして小野や中村など新しいスターの出現によって、カズを記憶の隅の方へ追いやってはいないだろうか。しかし、少なくとも記録上カズを超えそうな勢いのあるプレーヤーが見つからないのが現実なのである。


もう一度くり返そう。カズは突出した才能を持つストライカーであろうか。答えは否である。彼は類まれなる努力と貪欲さを持ってこの高みまで昇りつめ、そしてさらに上を目指し続ける。フランスワールドカップで代表落ちを味わったあと、クロアチアに単身乗り込んだことも、100ゴール達成後に口にしたセリフが「200ゴールを目指す」であったことも、たゆまぬ向上心のあらわれである。次代のプレーヤーの方が技術的には上かもしれぬ。しかし、今の若い選手の失敗を恐れた計算高いプレーではなく、カズが体現したような「がむしゃらなプレー」を見たいと思うのは私だけではないはずだ。


ところでカズの記録のあとに続く、例えば浦和レッドダイヤモンズの福田などはJ2リーグのゴールも「Jリーグ通算」に数えるのだろうか。また逆に東京FCや川崎フロンターレの選手のJFL時代のゴールはカウントされるのだろうか。おそらく答えはいずれも「NO」で、J1でのゴールのみ数えることになるであろう。そうするとカズの100ゴールはますます重みを持ってくるであろう。


最後になるが、カズの本名「知良」は、「和良」とするところを親が字を間違えたんではないのかな。