地震と資本主義


新潟県中越地震の経済的被害が広がっている。
県外では「新潟県全体が被災した」というイメージでとらえられ、直接被害を受けなかった観光地でも宿泊キャンセルが急増し、敬遠、自粛傾向が見られているというのだ。直接被害がない地域でも、相次ぐ余震報道や被災地への配慮から、表立ってキャンペーンもできない状態らしい。


かの地震に真っ先に反応したのは株式市場である。
直後の出来高ランキングもしくは株価上昇率ランキングのトップに来たのはJR系の建設会社鉄建と、新潟県地盤の建設会社植木組。つまり復旧・復興関連株が急騰した。その後も世紀東急工業日本橋梁など復興関連株が続伸している。
これが市場原理だから仕方ないとはいえ、人の弱みにつけ込んで、これだけの被災者が家にも帰れず避難生活をしているのを横目に金儲けをしている人間がいるのは嘆かわしいことだ。
せめてその利潤のうちの幾ばくかでも、被災者への募金に回してくれることを願うばかりである。


また最近、イトーヨーカドーが「がんばれ新潟」と銘打って特別セールを開催した。
新潟産の農産物などを特別価格で提供しているのだが、これは果たして被災者のためになるのだろうか。もちろん、避難生活が続く彼らのことを忘れてはならない。たとえば今なお避難生活が続く三宅島島民のことを覚えている人がどれだけいることか。常に意識し続ける契機としての意味は確かにある。
しかし経済的側面から見ると、その農産物が売れたからといって被災者の懐が潤うわけではないだろう。なぜなら野菜などは返品のきかない、いわゆる買い取り商品であり、いくら売れようと支払額は既に決まっており、変わらないはずだからだ。つまり募金、義援金の類を別にすると、このセールは被災者をダシにした単なる販促キャンペーンに他ならないのではないだろうか。


そんななか、サッカー日本代表ジーコ監督はアルビレックス新潟VSジーコジャパン・ドリームチームのビッグスワン(新潟)でのチャリティ・マッチの開催を決めた。これは先のW杯予選における“功労者騒動”の余波ではあるが、素晴らしい決断である。被災者、災害情報被害者、すべての新潟県民にとって大きな励みとなるだろう。



後記:イトーヨーカドーについて、批判だけしているように見えてしまうので、良い点もフォローしておこう。
   ◆被災地で出荷できなくなっていた商品を首都圏に緊急輸送して販売した。
   http://www.itoyokado.iyg.co.jp/company/news/spcl/041030.html
   ◆被災地へ支援物資を提供した。
   http://www.itoyokado.iyg.co.jp/company/news/spcl/041025_2.html
   http://www.itoyokado.iyg.co.jp/company/news/spcl/041025_1.html
   http://www.itoyokado.iyg.co.jp/company/news/spcl/041021.html