i Play On Demandの功罪


iPodをはじめ、デジタルオーディオプレーヤーの売れ行きが好調のようです。そういうアタシもiPod miniを愛用していますが、iTunesと組み合わせてその便利さと手軽さにはいつも感謝しています。


でもこれって、好きな曲だけを集めて聴くことができる反面、好きな曲しか聴かなくなってしまうんですよね。
CDを買わずに、iTMSなどネットでのダウンロード販売を利用する人も多くなってきました。これらも当然、好きな曲だけを購入しているわけですね。


しかし、CD(アルバム)を作るに当たっては、構成というか、音楽の作り手の思いを1つのストーリーとして曲の順番が決められ、並べられているはずです。その情念を無視して、好きなものだけつまみ食いをするのが果たしてよいことなのでしょうか。
そんなの自分の勝手じゃん、と言われればそれまでなんですが、どこかで聴いてちょっと気に入った曲、くらいの関心ならまだしも、そのアーティストのファンを自認するならば、そのアルバムからお気に入りの曲だけをピックアップして聴くというのは邪道ではないでしょうか。
アルバムを聴き続けていれば、この次の曲にこれ、というふうにリズムができるというか、イントロが口をついて出てきます。ベスト盤やコンピアルバムで違和感を感じるのは記憶と違う曲が並べられているから。いわば、そのアルバム1枚が1つの曲として扱って然るべきと言えないでしょうか。


好きなモノだけ選べる、っていうのは今の時代に合っているのかもしれません。
オンデマンド放送しかり、アラカルト料理しかり、好きな(受験に必要な)科目だけ勉強するってのもこの一環?
でもウラには地デジTVの強制購入や偏食、履修不足など危険な要素も孕んでいます。好きなことしかやらないコドモが学級崩壊を招く、なんてのもあるかな。
消費者にとって選択肢の多い時代、すなわち自己責任社会が訪れているのですね。
これはサービスの送り手側から見ると、チャネルの多角化という努力=進化と消費者への丸投げ=怠慢という退化が同居した複雑な状態です。


反面、いや同時に、と言った方が適切でしょうか、リコメンド(おすすめ)の時代もやってきています。
選択肢が多すぎて、自分で選べない人も急増しているようなのです。
消費者がパンクするとどうなるか。
また提供者に丸投げするんですね。
「どれがおすすめ?」
店員直筆のPOPや口コミ、ネット上のコメントなど、判断基準を外部に求めるのです。
でもこれもまた正しいのです。その道のプロフェッショナルや経験者にたずねるというのは昔から最もポピュラーな方法ですよね。レストランに行けば「おすすめの料理は何ですか?」って聞くのはいたってフツウのことだし、「何事にも先達はあらまほしきことなり」は昔から変わらぬ真理でしょ。


つまり両極端が存在すれば、その間で振り子が振れて、その時代に合わせてどちらにも転がるんですね。
この振り子が振れる、ってこと自体が大事なのかな。


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