知性的で、衝撃的な、愛すべき壊し屋

「白覆面の魔王」。

 

 プロレスラーにはキャッチフレーズが不可欠である。

 「燃える闘魂」、「黒い呪術師」、「不沈艦」、最近?では「100年に1人の逸材」などもそうだ。そんな中でも、特に古くから親しまれ、恐れられたのがこの「白覆面の魔王」ザ・デストロイヤーである。


 「日本プロレスの父」力道山のライバルとして活躍し、彼を苦しめている様子を真上から撮った写真はたいへん有名である。

https://image.middle-edge.jp/medium/227d2815-5e4e-4245-ba6c-4210213689f8.jpg?1480940210
出典 news.walkerplus.com


 私が小学生の時分に彼を認識した時はもはや老練の域に入っており、「東洋の巨人」ジャイアント馬場率いる全日本プロレスの一員となって、まだデビュー間もない三沢光晴川田利明に稽古をつけていたのを覚えている。特に東京よみうりランドの野外ステージであるオープンシアターイーストで行われたファン感謝デーで、その純白に赤い縁取りのマスクに触って追いかけられたことは忘れられない思い出である。
 ただその覆面の奥に覗く目はまん丸く、とても優しそうだったことを覚えている。たしか、当時調べた記憶があるが、プロレスラーになる前は高校教師だったかと思う。子供が好きだったのは間違いなさそうだ。プロフェッショナルとして成功するためには、特に日本では力道山や馬場のライバル(敵役)としてのポジションを得るには、その優しい本性をマスクで隠して、ヒール(悪役)として生きるのがベストだったのであろう。


 そんな彼、ディック・ベイヤーの訃報が届いた。
 時代的に、彼のレスリングにそれほど熱狂したわけではないが、それでも上記のような思い出はある。
 何より、彼の代名詞『足4の字固め』は今なお現役の必殺技である。かく言う私も小6の息子に対して毎週のように御見舞いしており、泣き喚いている愚息に「これの逃げ方は唯一つ、裏返しにするんだ」と知る人ぞ知る(笑)対処法を仕込んでいるところである。

 


ジ・インテリジェント・ザ・センセーショナル・ザ・デストロイヤー

彼の正式なリングネームである。
その名に違わぬレスラーであった。

合掌。