代表引退試合?


サッカー日本代表ジーコ監督が語ったとされる、2006年ドイツW杯一次予選のシンガポール戦にベテランの功労者を招集したいというアイデアが物議を醸している。


このアイデアを悪く言う人もいるが、カズやゴンを初めとするベテラン選手の青い姿をもう一度見たいと思う人は多いはずだ。
確かに試合自体の重要性は低い。日本は既に一次予選突破を決めており、シンガポールは予選敗退が決まっているからだ。関係者の多くは、だからこそ控え選手や若手にチャンスを与え、経験を積ませるべきだと言う。


しかしいくら控え選手とはいえ、全く格下相手の戦いが「経験」になるだろうか。出場試合1、もしくは代表試合での得点という小さな称号が与えられるに過ぎない。これはその選手にとっては価値のあるものかもしれないが、日本代表チームにとっての意味は少ない。経験を積むなら一流チームと親善試合を組めばいい。ジーコならそれが可能だ。いや、寧ろそのためのジーコ監督ではなかったか。それよりもジーコの言う「彼らだってまだ現役だ。そういう批判こそ彼らに失礼だ」という意見の方がまともに聞こえる。


元日本代表主将の井原正巳も「そういう場は選手にとってはたいへんありがたい」と語っている。もちろん、引退した後から思うと、ということだが。彼は主将として出場した試合で怪我をした後、若手の台頭もあり、代表に呼ばれなくなってしまったという経験を持つ。そしてそのまま引退。代表出場試合数歴代No.1の選手に対してこの扱いは酷いと言えよう。そんな彼だからこそジーコの意見に賛同し、感謝しているのだ。


最近ではイタリアのロベルト・バッジオが代表引退試合をおこなった。多くのファンが彼の勇姿に感動し、賞賛を与えていた。そんな試合が日本にもあってもいいのではないか。
何でも真似をすればよいというわけではないが、世界では当然のようにおこなわれている、決して非常識なことではないし、ましてやキング・カズ、エース・ゴンである。サッカーファンは、彼らには感謝してもし尽くせないだろう。


唯一の懸念は、バッジオなどは自ら公言しての「代表引退試合」であったことだ。カズにしろゴンにしろ、あるいは名良橋などは今でも「再び代表に選ばれるために必死でプレイしている」と言っている。すなわち「代表引退」を押しつけられることになり、それ以降のモチベーションが低下してしまわないかということである。
杞憂であってほしい。
もう一度代表のユニフォームを着たカズを見たい、ゴンを見たい。
それだけでいいのかもしれない。