環境問題を身近なものと考えよう


先進国に温暖化ガスの排出削減を求めた、いわゆる「京都議定書」が来春にも発効となりそうだ。


この議定書によると、日本は2010年までに6%排出を削減しなければならない。この数字は現状レベルの省エネでは到底追いつかない数字だ。よって政府は排出の8割を占める企業、特に大企業に対して温暖化ガスの排出量の報告を義務付け、公表する方針だ。削減の進まない企業には省エネ努力を強く求めるとのこと。これに対し産業界は規制強化と反発している。「省エネ努力値」が評価基準の一つになり、ひいては排出枠の設定につながり、企業活動が制約されるおそれがあると警戒している。


だがこうした排出量が把握できれば、「排出権取引」の制度作りにも役立つ。これは各企業に排出枠を設け、その上でその権利を売買するものだ。これで権利を買えば制約は最低限で抑えられる。もちろんコストはかかるのだが、これからの時代、環境対策に力を入れない(コストをかけない)企業は評価されにくくなることは明らかである。
そして全体量が把握できれば、今度は国家間で排出権取引が可能になる。排出量削減枠に余裕のあるロシアなどから権利を買い取ったり、そして企業が発展途上国での排出量削減に協力すれば、その分もカウントされるという「京都メカニズム」を利用して国際公約値であるー6%を実現するのに一歩近づけるのである。


他方で「環境税」の導入がささやかれているが、これはCO2について1トンあたり3,000円程度の税金を課し、その税収で排出削減を行うということらしい。しかしこれは文部科学省のtotoなどと同様、環境省特定財源を与えるだけではないのか。そのどのように使われるのか不透明にならないか。役人に渡すと効率の悪い使い方しかできないのではないか、などの疑問がつきまとう。むしろ民間企業の努力により削減を目指す方が安心できる。
しかし、税金の唯一の良い点は、国民(消費者)全員に危機意識を持たせることができるということである。環境問題は一人一人が被害者であると同時に加害者でもあるわけだから。もちろん税金なしに意識するのがベストなのだが。


そしてなにより欠かせないのが省エネ技術の発展と代替エネルギーの利用である。
省エネ製品を開発あるいは導入すれば、消費者および市場はその企業を評価する、そうなるべきである。そして温暖化ガスを発生しない、もしくは少ししか発生しない原子力天然ガス、風力、地熱などのエネルギーシェアを高めることも本気で検討しなければならない。


一度、自分の勤める企業の温暖化ガス排出量を調べてみると良いかもしれない。
報告義務の対象となるのは製鉄所、化学プラントなどの工場だけでなく、大規模なオフィスや百貨店、ホテルにも及ぶらしい。現在自主的に数値を公表している企業は上場企業の2割程度だという。公表してなくても、社内で見聞してすぐにわかるようであれば前向きに取り組んでいる会社と言えよう。
会社の将来性、社会性を測る尺度の一つになっていくことだろう。